アレルギー性鼻炎
アレルギー性鼻炎
アレルギー性鼻炎は、スギ花粉などによって引き起こされる季節性アレルギー性鼻炎(いわゆる花粉症)と、ダニやハウスダストなどによって引き起こされる通年性アレルギー性鼻炎がありますが、どちらも併存することもしばしばあります。
症状は季節性・通年性のいずれも、鼻水、鼻づまり、くしゃみ、目のかゆみ、充血などです。一般的な治療としては、原因が特定できる場合は、可能な限り原因の回避と除去(こまめな掃除など)を行い、その上で薬物療法を施行する場合には、症状や重症度に応じて抗ヒスタミン薬や鼻噴霧用ステロイド薬などを用い、症状の緩和を目指します。
根本的な観点からアレルギーを治療する舌下免疫療法は、スギ花粉症、ダニアレルギー性鼻炎ともに、5歳以上から治療対象となります。通年性のダニアレルギー性鼻炎は、一年を通して治療できますが、スギ花粉症の場合、スギ花粉が飛散する時期は治療開始できず、飛散が終わる6月以降から治療を開始できます。舌下免疫療法は、治療期間は3~5年と長期にわたりますが、ご自宅で服用できるため継続しやすいといったメリットがあります。長期的に正しく治療することで、症状を完全に抑えたり、症状を緩和しアレルギー治療薬を減らせたりする効果が期待できます。
アレルギー性鼻炎の患者さんの25%程度に喘息の合併があり、気管支喘息の患者さんの約70%にアレルギー性鼻炎が合併するといわれています。アレルギー性鼻炎の症状が悪化すると喘息もひどくなるケースが多く、アレルギー性鼻炎と喘息を合わせて治療することが重要です。また、アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患も合併しやすくなるといわれています。
毎年、スギ花粉の飛散期に、くしゃみ、鼻のかゆみ、鼻水、鼻づまり鼻症状が認められ、時として目のかゆみなどを伴う場合、スギ花粉症が疑われます。これらの所見に採血検査(特異的IgE検査)の結果を組み合わせて診断します。
通年性のくしゃみ、鼻のかゆみ、鼻水、鼻づまりの典型的な鼻症状が認められ、目のかゆみなどの眼症状、咳、喘鳴(ぜんめい)、呼吸困難などの喘息症状などを伴う場合、ダニアレルギー性鼻炎の可能性が考えられます。これらの所見に採血検査(特異的 IgE検査)の結果を組み合わせて診断します。
最も一般的な治療法で、飲み薬と点鼻薬を併用することで効果が出ます。鼻水を抑える抗ヒスタミン薬内服や、鼻の炎症を抑える点鼻ステロイド薬、鼻詰まりに効果があるロイコトリエン受容体拮抗薬などを用います。
第一世代の抗ヒスタミン薬は眠気などの副作用がありますが、近年は眠気の出にくい第二世代の抗ヒスタミン薬がよく使われます。
花粉症などに限らず、あらゆる鼻水、鼻詰まりに有効な治療法です。花粉やホコリ、ペットの毛などが鼻甲介粘膜に付着すると、アレルギー反応で粘膜が腫脹し鼻閉、鼻汁が生じますが、この治療では鼻甲介の中でも最も大きい下鼻甲介粘膜の表面をCO2レーザーで薄く焼くことで、花粉やホコリ、ペットの毛などが粘膜についたとしてもアレルギー症状を起きにくくします。
この治療は従来の手術的粘膜切除や薬物による粘膜焼灼に比べ、出血や痛みが軽減されており、比較的安全性が高く、短時間で済みますので、日帰り手術が可能です。
アレルギー性鼻炎、花粉症、肥厚性鼻炎のうち、抗ヒスタミン薬・抗アレルギー薬・点鼻ステロイドなどの薬物治療で改善がみられなかった方、特に強い鼻閉が主な症状の方が適応となります。
初回受診時
鼻腔ファイバースコーにて鼻内チェック(鼻中隔弯曲症、鼻茸などの有無チェック)、アレルギー採血検査、術前感染症採血検査(梅毒、B型肝炎、C型肝炎)を施行し、手術日を決定致します。過去に他院にて既にアレルギー採血検査を施行されており確定診断がついている方は、アレルギー採血検査結果を御持参頂くようお願い致します。
手術当日
まず、麻酔液のついたガーゼを鼻腔に入れ、鼻粘膜の麻酔を行います(15分程)。ガーゼを抜いたのち、手術用硬性内視鏡でしっかりと鼻内を確認しながら、CO2レーザーで下鼻甲介粘膜を焼灼します。手術時間は10〜20分です。術後完全に止血したのを確認して帰宅となります。
レーザー治療の鼻閉に対する有効率(ほとんど無症状・大きく改善・多少改善を含む)は90%以上とされていますが、効果には個人差が大きく中には効果がなかったという方もいらっしゃいます。(これを術前に予測することは困難です)。鼻水やくしゃみに対する効果は、鼻閉に対する効果よりは落ちます。1回の照射で効果がみられた方(60%程度)は、追加の照射(2〜3回)により効果の強化(80〜90%程度)が期待できるとされています。
永続的な効果を期待する治療ではありません、いずれ症状が復活します。持続期間にも個人差が大きく、数ヶ月~数年とバラつきがあります。術後1〜2ヶ月ほどで効果が出てきますので、スギ花粉対策を行う方は年内に治療を終わらせておくことをお勧め致します。スギ花粉症が無く、通年性アレルギ性鼻炎、肥厚性鼻炎の方は、1年中本治療を受け付けております。
鼻炎治療のためのCO2レーザー手術には、健康保険が適応されます。原則として同時に両側行います。3割負担の方は8730円が手術料と決められています。これに診察料や投薬料が加算されます。初回診察時の初診料、検査料、投薬料などは、手術料に含まれず別途となります。
アレルゲン免疫療法は、アレルゲン※1を低濃度から体内に取り込み、徐々に濃度を上げていき、慣れさせることで体質改善を目指す治療法です。薬物治療(対症療法)とは異なり、根本的にアレルギーを治療する方法として注目されています。
従来から注射による皮下免疫療法が行われていましたが、アナフィラキシー※2などの副反応、頻回な通院、そして毎回注射の痛みも伴います。このような皮下免疫療法の負担を軽減した治療法が、舌の下に治療薬を投与する舌下免疫療法です。これにより、ご自宅での服薬で免疫療法が行えるようになりました。
舌下免疫療法は1980年代に海外で開始された治療法で、日本では2014年にスギ花粉症で初めて保険適用となり、翌年の2015年には、ダニを原因とする通年性アレルギー性鼻炎も保険適用となりました。
このため現時点での日本における舌下免疫療法の適応は、スギ花粉またはダニが原因となるアレルギー性鼻炎と診断された方で、薬物療法でアレルギー性鼻炎の症状やQOL(生活の質)を十分にコントロールできない方、あるいは、アレルギー性鼻炎の臨床的寛解※3をご希望される方、となっています。
一方、重症喘息などを合併する方は受けられず、高血圧(ベータ遮断薬)を服用している方、治療開始時に妊娠している方も控えるべきとされています。
※1.アレルゲン:アレルギーを起こす物質
※2.アナフィラキシー:医薬品などに対する急性の過敏反応で、蕁麻疹などの皮膚症状、腹痛や嘔吐などの消化器症状、息苦しさなどの呼吸器症状、突然のショック症状(蒼白、意識の混濁など)がみられる病態
※3.臨床的寛解:炎症によって引き起こされる疾患の症状や徴候がまったくないこと
治療は3~5年継続する必要があります。長期間かけて体をアレルゲンに慣らし、免疫力を高め体質を改善する治療とお考えください。
スギ花粉症では、治療を開始してはじめて迎えるスギ花粉飛散のシーズンから、ダニアレルギー性鼻炎では、治療を開始して数ヶ月後から効果が期待できます。年単位の治療継続で最大の効果が得られると考えられています。
※ただし、すべての患者さんに同様の効果が期待できるわけではないことをご了承ください。
1日1回、少量の治療薬から服用をはじめ、増量期を経て、決められた一定量を数年間継続して頂きます。初日の服用は、当院で医師の監督のもと行い、2日目からはご自宅で服用頂きます。
基本的に、1ヶ月に1回受診頂き、副作用や治療効果などを確認させて頂きます。
治療薬を舌の下に置き、薬ごとに定められた時間を経過した後に飲み込みます。
その後5分間は、うがい、飲食を控えます。また、運動や入浴は2時間程度避けるようにします。
スギ花粉症の場合、スギ花粉の飛散時期はアレルゲンに対する体の反応性が過敏になっているため、新たに治療をはじめることはできません。花粉飛散が終わる6月以降から治療を開始できます。一方、ダニアレルギー性鼻炎の場合は、時期に関わらず治療をはじめることができます。
スギ花粉とダニの両方に対してアレルギーがある方は、治療は並行して可能ですが、同時に開始することはできません。まず、どちらかを開始して、症状が安定してからもう一方の治療を開始します。いずれの場合におきましても、適切な開始時期を提案させて頂きます。
スギ花粉症、ダニアレルギー性鼻炎の治療対象年齢は、いずれも5歳以上です。
長期にわたりアレルギー性鼻炎の症状を抑える効果が期待できます。症状が完全に抑えられない場合でも、症状を緩和し、アレルギー治療薬の減量が期待できます。
舌下免疫療法では重篤な副作用が発生することは稀とされており、軽微な症状としては、次のようなものが報告されています。ほとんどが一時的なものですが、もしこのような症状が出現し、治まらない場合はすぐに受診してください。
重度のスギ花粉症に対して、抗IgE抗体オマリズマブを皮下注射する治療を行うことができます。
スギ花粉症によるくしゃみ、鼻水が止まらない、鼻詰まりがひどいといった鼻炎症状が従来の薬物療法を行ってもおさまらず1日中鼻をかむ、薬によって眠気が強いといった方の検討する価値の高い治療です。
治療にあたっては、以下の条件を満たすことが必要です。